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展覧会レビュー、建物の形がよく分からない墨田区のすみだ北斎美術館にて『北斎の帰還』展

展  示:北斎の帰還 幻の絵巻と名品コレクション
鑑賞日:2016年12月
場  所:すみだ北斎美術館


・目玉は『隅田川両岸景色図巻』で、着色された約7mもある絵巻。海外で紛失されたと思われていた幻の作品らしい。

線がシッカリしているが穏やかな色合いで、上品な雰囲気のある作品だった。
両国から吉原までの隅田川ぞいの名所が描かれている。
・美術館としては、建物の形がよく分からない形をしている。3-4Fが展示室になっているが、エレベーターでしか移動できず混雑時は、そこそこ待たされる。
・企画展、常設展ともにそこそこ粒ぞろいの作品が展示されているが、初摺りモノのような状態の素晴らしいモノはなかった。

○今回の一品(お気に入り)
『詩歌写真鏡 雪中人馬』
遠くを見やる人物の後姿に魅力を感じた



○チラシ


展覧会レビュー、裸婦を見続けてだんだんクラクラしてきたクラーナハ展@国立西洋美術館

展  示:クラーナハ 五〇〇年後の誘惑
鑑賞日:2016年12月
場  所:国立西洋美術館

・ヴィーナスは、小さな絵だが漆黒に浮かぶ裸婦が魅力的、とても存在感がある。
同じ様式の『ルクレティア』もあるが、顔の表情に違和感を覚える。
・3年の修復を終えた『ホロフェルネスの首を持つユディト』は、肌の質感や色合いがとても新鮮で、美しさが際立つ。
・全体を見ると体のアンバランスさが見えるが、妖艶な雰囲気に満ちたヴィーナスが一押し

○今回の一品(お気に入り)
『ヴィーナス』(1532年)



○チラシ







展覧会レビュー、『ポルト・リガトの聖母』が一押し、ダリ展@国立新美術館

展  示:ダリ展 ー完璧をおそれるなー
鑑賞日:2016年11月27日
場  所:国立新美術館

・展示数が250点あり、映像資料も多かった。
・初期の作品から、アメリカ時代~原爆に影響を受けた後期まで時系列に展示。
画風の変化が、分かりやすい展示だった

○今回の一品(お気に入り)
『ポルト・リガトの聖母』(1950年 福岡市美術館蔵)


○チラシ




展覧会レビュー、「ダンボー展」@スカイツリー,よつばと,写真展

 スカイツリー5F634で開催中の「ダンボー写真展」へ行きました。

 ダンボーは、『よつばと』@マンガに登場するキャラ?というか、夏休みの工作です。
 登場回数は、数回しかなかったように思いますが、玩具(フィギュア)が発売されて、人気のようです。
 その玩具を被写体として、日常の情景と合わせた写真の展覧会です。
 作家は、アリエル・ナデルというアメリカの写真家だそうです。
 ダンボーの写真集があるじたい初めて知ったのですが、海を渡った先にダンボーフリークが生まれていることに驚きです。
 写真展では、写真集に載らなかった340枚の展示があるということですが、展示は結構な量がありました。
 鑑賞者は当然ですが、子供連れが多かったです。
 
 作品は、なんとも言えない抒情的・哀愁ただようモノが多くありました。
 ダンボーの顔は、〇と△しかない締りのないものなのですが、この締まりのなさが一種の切なさを生むことに驚きです。
 作家のシチュエーションを構成する力や、撮影技術に感心します。
 ダンボーのフィギュアが全高120mmと小ぶりなこともあり、日常の生活道具などと組み合わせると、大きさの対比が非日常的な雰囲気づくりに役立っていました。
 個人的には雨にたたずみ、黄昏るダンボーがお気に入りです
 展示期間は短いですが、スカイツリーへの観光ついでに鑑賞してみてはどうでしょうか。
 『よつばと』のマンガを知らなくても、十分、楽しめます。


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会場:スペース634、スカイツリー
期間:9月11日~9月23日
費用:無料
 



〇参考

よつばと


リボルテックダンボー@海洋堂


365 Days of Danboard

展覧会レビュー、「行ける工場夜景展」@浅草橋,写真展

  浅草橋のTODAYS GALLERY STUDIOで、開催されている工場夜景写真の展覧会へ行きました。

前に川崎の工場夜景クルーズを知って、行ってみたい思いつつ実現できていません。
そんな中、この展覧会の開催を知った以上、行かねばなるまい!と行ってきたしだいです。
  浅草橋と蔵前の間にある小さなギャラリー「TODAYS GALLERY STUDIO」を初めて訪問したのですが、そんな広くない会場に数十名の客が来ていました。
   どこからネタを聞きつけたのか、分からないのですが、こんなピンポイントに絞ったネタに反応する人が結構いることに、この分野の裾野の広がりを感じます。
  この展覧会では、作家の好意で作品の撮影も「可」とありましたので、いくつか印象に残ったものを撮らせてもらいました。
   最後の方には、だんだん麻痺して同じような景色に見えてきてしまうのですが、初めは風景写真や街の夜景写真とも違う、独自の世界に圧倒されました。
  写っているのは、鉄のカタマリと光、生身のものは何もありません。
  コンビナートに石油精製工場等で、ハシゴにパイプに煙突に・・・無機物の集合体。
  その無機物を照らす、これまた人工の照明器具の明かりが、夜景をバックにした鉄のカタマリに得も言われぬ陰影と表情を与えていきます。
  美しく見せようとか、形よく格好よく見せようと考えられたこともない建物が、写真を通すと、生々しく哀愁感さえ感じさせる作品になることに、素直に感心します。
 
  良いカメラ使ってるんだろうな―とか、ポイント探しが大変そうとか、いろいろと余計なことも考えてしまいました。
  映像作品もありましたが、上空からの映像も多く、ドローン使っているんだろうなーと時代の変化も感じました。
  かつて一時期に流行ったことのある廃墟写真のように、ある種の愛好家がつくことに納得です。
   たぶん、真っ昼間に見たんじゃ汚い寂れた工場が、夜景になることで全くの別物に生まれ変わるのに驚きです。
  開催期間が短いのが残念ですが、ー見の価値ある展覧会です。
  浅草橋周辺はモノ作りの素材屋(レザー、ビーズ、石など)も多く、飲食店もいろいろあります。
  散策もかねてシルバーウィークのイベントとして、お出かけになってはいかがでしょうか?


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工場夜景の合同写真展「行ける工場夜景展」
開催日時:2015年9月18日(金)〜9月27日(日) 11:00〜19:00
会場:TODAYS GALLERY STUDIO
住所:東京都台東区浅草橋5-27-6 5F
入場料:500円

〇参考図書

工場夜景


工場萌えF

Art倶楽部 2015年後半の鑑賞予定

Art倶楽部(美術館巡り)での2015年後半の定例鑑賞会の予定を更新しました。

http://jinzi-kuwa.blogspot.jp/p/art.html

2015年 後半
7月26日(日)
「世界報道写真展」@東京芸術劇場
集合時間/14:00
集合場所/チケット売り場前
http://www.asahi.com/event/wpph/

8月30日(日)
「ボルドー展」@国立西洋美術館
集合時間/14:00
集合場所/チケット売り場前
http://www.tbs.co.jp/bordeaux2015/

9月27日(日)
「徳川の城」@江戸東京博物館
集合時間/14:00
集合場所/チケット売り場前
http://tc2015.jp/index.html

10月25日(日)
「琳派と秋の彩展」@山種美術館
集合時間/14:00
集合場所/チケット売り場前
http://www.yamatane-museum.jp/exh/next.html

11月29日(日)
「黄金伝説展」@国立西洋美術館
集合時間/14:00
集合場所/チケット売り場前
http://www.tokyo-np.co.jp/gold/index.html

12月20日(日)
集合時間/14:00
集合場所/チケット売り場前
http://heibayou.jp/

参加希望の場合、お手数ですがFacebookのイベントページから投稿などいただくか、連絡フォームよりメッセージください。


展覧会レビュー、2月 定例鑑賞会 新印象派展@東京都美術館

Art倶楽部の定例鑑賞会で、新印象派展@東京都美術館へ行ってきました。

 Art倶楽部での定例鑑賞会『新印象派展@東京都美術館』の感想です。
 スーラやシニャックといった新印象派について、1880年代の初期からフォービズムへ繋がる後期への流れについて、時代に沿って見ていくことのできる展示となっていました。

 スーラ等は印象派の展覧会があった時には、展示の構成の一部で取り扱われることはあっても、ここまで集中して展示されることはなかったので、スーラやシニャックの好きな小坊主にとってはとても楽しめた展覧会となりました。
 スーラやシニャックといえば、点描画。
 今回の展覧会でも点描画は多く展示されていましたが、気になった作品を並べていきます。
ジョルジュ・スーラ セーヌ川 クールブヴォワにて

ジョルジュ・スーラ グランド・ジャット島の日曜日の午後

こちらのスーラの有名な『グランド・ジャット島の日曜日の午後』は、展示されていたわけではなく下の習作との比較用です。
 こうやって比べてみると、習作ではよく印象派の風景画の雰囲気ですが、完成版では点描の色合いの鮮やかさが際立って見えますね!
スーラ グランド・ジャット島の日曜日の午後(習作)
 ルイ・アイエという画家は、今回の展覧会で初めて目にしました。フランスの画家のようです。
ルイ・アイエ カフェにて
 こちらのマクシミリアン・リュスも、初めての画家です。
 今回の展覧会では、この夜の風景がとても気に入りました。
 夜景の光の扱い方が、素晴らしいです。
マクシミリアン・リュス ルーブルとカルーゼル橋、夜の効果
 点描での人物画を見た記憶がないので、この『白いドレスの女性』はとても新鮮でした。

アルベール・デュボワ 白いドレスの女性
マクシミリアン・リュス 工場の煙突

シニャック オンフルールの港口
 先の『白いドレスの女性』を見てから、マティスの『日傘の女性』を見ると、この省略の仕方がとても新鮮です。
 抽象的で十分な情景を描くことができるのですね。
 大きな色の配置での省略の技術には、素直に驚きました。
マティス 日傘の女性
 スーラ等の作品も良かったですが、今回は他の新印象派の初めて目にする画家も多く、表現の多様さを感じることができました。
 いろいろな画家が新しい技法だった筆触分割などに取り組み、表現を模索していたんですね。
あまり新印象派としての活動が長続きした画家は少ないようですが、表現の世界に一定の影響を与えたことがよく分かりました。
 新しい表現に挑戦し模索することこそ、芸術活動の源泉なんでしょうね。
 完成することのない表現の世界には終わりがないので、画家のパッションは大事です。


 小坊主には、そこまでのパッションの持ち合わせがないので、これではイカンと思ってはいますが・・・

ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口@シネスイッチ銀座

至高の芸術を先端映像で体験!
「ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口」予告編 
http://eiga.com/news/20150131/5/

シネスイッチ銀座
2月28日(土)から、上映予定


ヴァチカン美術館には、一度、行ったことがあるけど、映像でも良いからもう一度、見てみたい・・・

展覧会レビュー、1月 定例鑑賞会 東山魁夷と日本の四季@山種美術館、Art倶楽部(美術館巡り)

山種美術館は以前に川合玉堂展に来ていらいの訪問で、約1年ぶりとなります。



東山魁夷は名前は知っていて、他の日本画の展覧会等で作品も見ているのですが、どのような経歴の人かも分かっていなかったため、今回の展覧会のため、少し勉強してみました。
以下、東山魁夷の経歴概略です。

〇略年表
1908年 横浜に生まれる
1926年 東京美術学校(現東京芸術大学)日本画科に入学
1931年 東京美術学校を卒業。卒業制作として『焼獄初冬』を描
      く。研究科に進み、結城素明に師事。雅号を『魁夷』とす
            る。
1933年 研究科を修了。国際航路の貨物船に乗り込み、渡欧。ベ
            ルリン着。ベルリン大学内の外国人語学部でドイツ語を
      学ぶ
1934年 3~7月にかけて、ヨーロッパ巡遊。第1回日独交換留学
      生に選ばれ、ベルリン大学哲学部美術史科に入学
1935年 父危篤の知らせにより、帰国。
1943年 4~5月にかけて、中国を旅する
1960年 東宮御所の壁画『日月四季図』が完成
1964年 第7回新日展に『冬華』出展
1968年 東宮御所の新宮殿壁画『朝明けの潮』が完成
1975年 唐招提寺障壁画『山雲』『濤声』完成
1980年 唐招提寺障壁画『黄山暁雲』『桂林月宵』『揚州薫風』完
      成
1995年 長野県木曾郡山口村(岐阜県中津川市)に『東山魁夷・
      心の旅路館』完成
1999年 老衰のため死去
2005年 香川県立東山魁夷せとうち美術館が開館

こう経歴を見てみると、画家としては恵まれた環境にあったように思います。
2回も欧州へ留学し、ドイツ・イタリア等を巡り、ルネッサンスや西洋美術に慣れ親しむことができています。
本人にとっては、留学中の帰国を余儀なくされるなど不本意なところもあったかもしれませんが、当時、数年かけて留学できたこと自体が、恵まれていたと思います。

また、『青の巨匠』と呼ばれていることを初めて知りました。
唐招提寺や東宮御所での壁画を制作していたのですね。
東宮御所等の作品を見ると、『青の巨匠』と呼ばれるのも分かります。
明治以前の日本画の絵具と昭和年代の絵具との違いもあると思いますが、青色の多層的な表現は素晴らしいと感じました。
今回の展覧会では、こちらの『満ち来る潮』が皇居の壁画に近いモノらしく、立派なモノでした。
シッカリした安定感のある画面構成に、明るさがありながらも軽薄にならない青色の表現。
波濤と表現する銀色は、プラチナだそうです。

満ち来る潮

東山魁夷の画風を画集などで見ていくと、基本、風景画を続けていますが、初期・中期・後年といろいろと変化が見られます。
初期は師匠たちの影響もあるのでしょうが、基本に忠実な日本画という印象があります。
そこから、海外留学を経て西洋画的な風景表現も取り込みつつ、後年の独自の表現に変化していったことが感じられます。
やはり先に少しでも学習しておくと、鑑賞内容に違う視点が加わり、面白くなりますね。

今回の展覧会では、先の『満ち来る潮』以外では、こちらの『年暮る』と『白い朝』が印象に残りました。

年暮る
白い朝

どちらも雪の白が印象的で、『年暮る』は夜景に降る雪が画面に静けさを与え、対として家々の明かりが暖かさと内に向かう内省的な雰囲気を描いているように感じました。
『白い朝』は画面のほとんどが白で埋められているのですが、湿った雪の感じが画面唯一と言える黒をあらわすトンビ?を引き立たせ、目を引きます。
また、トンビが背を向けているのが鑑賞者に向かってくる感じがなく、より画面に引き込む流れを作っていたように思います。
東山魁夷の作品には人間が全くでてこないので、その点については何か画家としての特徴があるのかもしれませんが、鳥でもいいので生あるものが画面にあると、それだけで存在感に違いが出てくるところが面白いところです。

スーラ、シニャックといった印象派画家の作品をメインに見ていくことになります。

スーラ等の点描画は小坊主の好きなモノで、ずっと見ていると飽きてくるのですが、色彩の豊かさが好きで、今回の展覧会も楽しみにしています。