展覧会レビュー、木造の建築模型がグッとくる!建築はやっぱり面白い『建築の日本展』@森美術館



概要

展 示:建築の日本展
鑑賞日:2018年5月
場 所:森美術館

評価

混み具合 辛い/1・2・③・4・5/快適
作品の数 少ない/1・2・3・④・5/多い
面 白 さ  退屈/1・2・3・4・⑤/面白い


構成

Section1 可能性としての木造
Section2 超越する美学
Section3 安らかなる屋根
Section4 建築としての工芸
Section5 連なる空間
Section6 開かれた折衷
Section7 集まって生きるかたち
Section8 発見された日本
Section9 共生する自然


今回の一品(お気に入り)

佐川美術館の茶室


イラストガイド






感想

会津さざえ堂、出雲大社の木造ミニチュアなど木造の骨組み展示は、建築の内部構造を鑑賞できて面白い。
国宝「待庵」の実物大の再現展示があり、中に入ることができる
2~3人しか入れないので、ちょっと待つことになるが、内部の再現も頑張っている様子が分かる

興味をそそられた展示としては、妹島和世氏が設計した京都の集合住宅 nisinoyamajyuutaku
屋根の連結した構造が複雑で、全体の形と住居としての構成が面白い。
建物としての魅力が高ければ、賃貸住宅としての価値も高まるだろうし、地域にマッチした住宅設計としては良いモノだと感じた。

コンセプトとしての精神性のある建物には、モニュメントとしての機能があり、人の精神に働きかけるのはなぜだろうと考えさせられた。
『建築における日本らしさ』をテーマにした展示ということで、木造・空間の連続性・素材・自然とのかかわり方などをテーマにした建物がピックアップされている。
技術としての構造、ライフスタイルとしての区画割り、コンセプトを形で表現する芸術性・・いろいろな切り口・見方の多様性が建築の魅力。
個人的には構造や区画割に、興味がある。

『日本らしさ』を考えると空間の考え方として、建物とその他のモノの境界を明確にしない、自然との接点を考える視点があるのではないかと思う。領域としての空間のとらえ方と言えばいいのだろうか?
自然との境界を曖昧にした空間として、『佐川美術館の茶室』が印象に残った。

また、『日本らしさ』とキーワードとして『水』を扱った建築も多かった。
今回の展示で、水を使った建築としては以下の3つが特徴的。
水の教会、鈴木大拙館、佐川美術館
水を使った建築だが、それぞれの建築で水で表現しようとしているものが違う?、共通点がある?という視点で見ていくと、コンセプトによる『水』とのかかわり方の特徴がある。

水の教会 
場所:トマム
設計:安藤忠雄
十字架を水で囲み『誰も触れられない区画』とすることで、聖なる空間として表現している。
聖なる空間を他の空間から分離し、聖性を高めるための『水』




鈴木大拙館
場所:金沢
設計:谷口吉生
鈴木大拙の思想、「禅」の思想を体現する建築
水鏡の庭、思索空間、内部回廊と区画あるが、展示物はほとんどない
思索空間を囲む水面は水鏡の庭と言われ、定期的に波紋を起こしている
同じように見えても、常に変化し続ける世界を表現する装置
鈴木大拙館での『水』は、自分や世界を映す鏡であり、空間で思想を表現しようとする方法の一つ




佐川美術館
場所:滋賀県
設計:竹中工務店
佐川急便40周年を記念した美術館で、琵琶湖の東岸にある
広い水庭に建物が浮かぶ印象を与えるよう考えられた建築で、水面と建物の床面が、ほぼ同水準に保つよう計算されている
茶室は、楽焼の楽吉左衛門の守破離を表現するよう考えられたらしい
周囲の環境と建築が境界のない一体としたものになるよう、水庭を活用している
『水』は世界とのつながりの表現であり、一体化をもたらす媒介となっている



『分離する水』、『表す水』、『つながる水』と『水』とのかかわりは、それぞれの建築で違った意味が与えられている。
形のない水へ精神を与え、形として表現する・・表現の形は違うが、『水』という自然を活用し精神を表現しようとするのは、『日本の遺伝子』なのだろうか?

そんな取り留めのないことを、考えさせられる展覧会だった。