読書メモ 殴り合う貴族たち・・・まぁ貴族はやりたい放題
源氏物語に描かれる貴族(貴公子)たちは、イケメンで歌(文学)の才にも恵まれている・・・しかし、清少納言『枕草子』や藤原実資『小右記』といった日記には、貴公子たちの暴力沙汰や殺人事件などが記録されている。
暴力事件の顛末をとおして、実際の貴公子たちの実態に迫ろうというのが本書である。
庶民の年収が7石2斗のところ、貴族の住まう寝殿造は5000石~7000石。
あまりにも大きい格差社会・・・庶民と貴族ではまさに天と地ほどの力の差がある。
当然、貴公子ともなれば権力の頂点に近い存在・・・殿上人は下々への暴力など何とも思っていない様子がよく分かる。
まぁ、貴族たちは小さなことから大きなことまで、いろいろな暴力事件を起こしている。
ある時は、喧嘩相手の『家』を引き倒して更地同然にしてしまい。
ある時は、小競り合いの仕返しに徒党を組んで、襲い掛かる。あまつさえ、従者の首をとって持ち帰るなど、単体で喧嘩するのではなく、従者も引き連れているため事件の規模も大きくなりやすいようだ。
興味深いのは、相手が位の高い相手・・・天皇であっても怒りにまかせて弓を射かけるなど、喧嘩をふっかけていること。
その理由が、自分の想い人が天皇と浮気している?ことへの嫉妬からやってしまうなど、なかなか抑えの効かない様子。
平安時代は貴族社会が歴史上でも主役となった時代で、和歌や日記文学なども発展した。
教科書などでも、この文学的な世界が紹介されることが多いためか、のんびりした時代という印象が付いてしまっている。
しかし、よく当時の背景をみれば末法思想が広がり、天災や治安の悪化、格差の広がりなど社会不安に満ちていた。
どうも、社会の実態と貴族の世界が結びつかないが、太平の世には遠い時代・・・本書を読めば、貴族の世界もバイオレンスな事件に溢れていて、リアルな世界と地続きである人間らしい世界があったことがよく分かる。
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