東京国立博物館「大覚寺展」を一緒に予習しましょう

2月の定例鑑賞会(東京美術館めぐり)は東京国立博物館の大覚寺展です

https://www.c-sqr.net/c/cs89189

展覧会の概要をザックリまとめてみました

軽く知識を入れてから鑑賞すると、展示をより楽しむことができると思います

ご参考にどうぞ

大覚寺展チケット情報 icon


●大覚寺の概要
京都西北の嵯峨に位置する大覚寺は、平安時代初期に嵯峨天皇の離宮として始まりました。876年に皇女・正子内親王の願いにより寺院となり、2026年に開創1150年を迎える歴史ある寺院です。真言宗大覚寺派の本山として、歴代天皇や皇族が住持を務めた由緒ある門跡寺院であり、嵯峨御所としても知られています。

●展覧会の構成
第1章:嵯峨天皇と空海
第2章:中興の祖 後宇多法皇
第3章:歴代天皇と宮廷文化
第4章:女御御所の襖絵―正寝殿と宸殿

●各章の見どころ
第1章:嵯峨天皇と空海
圧巻は2組の「五大明王像」です。
特に明円作の五大明王像は、平安時代を代表する仏師による天皇家ゆかりの傑作。整った顔立ちと柔らかな体つきに気品が漂い、貴族好みの洗練された美しさを表現しています。

第2章:中興の祖 後宇多法皇
8点の展示のうち7点が国宝・重要文化財という質の高さが特徴です。特に注目は2つの国宝:
「後宇多天皇宸翰 弘法大師伝」(前期)
「後宇多天皇宸翰 御手印遺告」(後期)

第3章:歴代天皇と宮廷文化
最大の見どころは、清和源氏に代々継承された「兄弟刀」の同時展示です。

「太刀 銘□忠(名物 薄緑〈膝丸〉)」
「太刀 銘 安綱(鬼切丸〈髭切〉)」
これら兄弟刀が京都以外で同時展示されるのは今回が初めてです。

第4章:展覧会のハイライト
【正寝殿について】
重要文化財指定の書院造りの建物
12の部屋で構成され、最も格式高い「御冠の間」は通常非公開
本展では「御冠の間」を展示室内に再現
狩野山楽による「山水図」も展示

【宸殿について】
1620年、東福門院和子の女御御所を移築
寺内の中央に位置する重要文化財
内部の襖絵は狩野山楽の代表作

【狩野山楽について】
桃山時代から江戸時代への過渡期に活躍した絵師(1559-1635)。狩野永徳の弟子として、その画風を見事に継承し、「京狩野」の基礎を築きました。豪壮な造形と溌剌とした気分を特徴とする作風は、躍動感と生命力に満ちています。

【代表作について】
《牡丹図》
・宸殿牡丹の間の東・北・西面を飾る襖絵
・大ぶりな牡丹を横長の画面に配置
・リズミカルな展開と奥行きのある構図が特徴

《紅白梅図》
宸殿紅梅の間の南面を飾る襖絵
満開の紅白梅の大樹とオシドリを描く
師・永徳の画風を洗練させた最高傑作の一つ

展覧会レビュー モネ 連作の情景@上野の森美術館(2024.1.28)

<概要>
展  示:モネ 連作の情景
鑑賞日:2024年1月
場  所:上野の森美術館

<評価>
混み具合  辛い/①・2・3・4・5/快適
作品の数 少ない/①・2・3・4・5/多い
面 白 さ   退屈/1・②・3・4・5/面白い

<構成>
1 印象派以前のモネ
2 印象派の画家、モネ
3 テーマへの集中
4 連作の画家、モネ
5 「睡蓮」とジヴェルニーの庭

<レビュー>
 モネ展の最終日にあたり大混雑していました。ちょっと甘く見ていました・・
 メンバーの方もチケット予約が取れなかったり、当日券も行列で諦めたりと参加が難しいイベントになってしまいました。
75点もモネの作品だけが展示されていて頑張って集めてきたなと思うとともに、これだけ集めてくるのに費用がかかるのでチケット代も3000円となかなかのお値段。
 2023年12月にSOMPO美術館で鑑賞した「ゴッホと静物画」と比べると、モチーフの選択・構図・色使い、どれもバランス良くまとまっています。モチーフへの光の当て方や色使いが上手い、ゴッホは平坦で光の当て方に工夫を感じなかった・・
 総合力を見るとさすがモネといったところです
 モネの連作シリーズをみていく展覧会でしたが、積み藁・ウォータールー橋・ジヴェルニーの庭・睡蓮と同じテーマで時間帯・構図を変えて描いている様子を見比べると、表現方法を変えていろいろな絵画の実験をしているようです。
 やはり単品で鑑賞するより、それぞれの作品の描きわけを一度に見比べられるとモネのその時の関心や描きたいポイントを感じられるので、なかなか面白い展覧会でした。

<今回の一品(お気に入り)>
「積みわら、雪の効果」1891年


展覧会レビュー ゴッホと静物画展@SOMPO美術館

<概要>
展  示:ゴッホと静物画
鑑賞日:2023年12月17日
場  所:SOMPO美術館
参加者:9名
<評価>
混み具合  辛い/1・2・3・④・5/快適
作品の数 少ない/1・2・③・4・5/多い
面 白 さ   退屈/1・2・3・④・5/面白い

ゴッホの静物画25展を展示、目玉は「アイリス」と「ひまわり」

<構成>
1 伝統 17世紀から19世紀
2 花の静物画
3 革新 19世紀から20世紀

<レビュー>
ゴッホのアイリスとひまわりがメインで、他は同時代の画家の作品ばかりの構成?と思っていたら、ゴッホの作品が25点(ひまわり含む)と多めの展示があり、嬉しい誤算。
ゴッホの静物画をあまり目にしたことがないのですが、静物画は絵の修行だとゴッホは思っていたそうで、かなり基本に沿った描き方と、色の研究という形で試行錯誤している雰囲気が感じられます。
ゴッホが描いた「ヴィーナスのトルソー」(油彩)があり、独学で基本的な絵のデッサンの研究もしていたのだなと新鮮な発見がありました。
ゴッホの静物画は、同時代の画家の作品と比べると下手ではないのですが上手くもない・・
マネの「白いシャクヤクとその他の花のある静物」とゴッホの「カーネーションをいけた花瓶」が並んで展示ありましたが、こう並べられるとゴッホの拙さが比較されてしまう感じで、ゴッホの絵は売れないかなと感じたしだい。
「アイリス」と「ひまわり」も並べて展示ありましたが、どちらもあまり感動せず。かつては「ひまわり」の生々しさに感動した記憶がありますが、慣れてしまったのか感性が鈍ってきたのか、感じるものが乏しくなってしまいました。

<今回の一品(お気に入り)>
皿と玉ねぎのある静物
入院から退院した時に描いたタイミングだったためか色使いが鮮やかで、皿や本の配置にも落ち着きを感じます


展覧会レビュー 永遠の都ローマ展@東京都美術館

<概要>
展 示:永遠の都ローマ展
鑑賞日:2023年11月26日
場 所:東京都美術館
<評価>
混み具合  辛い/1・2・3・④・5/快適
作品の数 少ない/1・2・③・4・5/多い
面 白 さ   退屈/1・2・③・4・5/面白い

ローマ教皇のコレクションを中心に建てられたカピトリーノ美術館のコレクション展示
カピトリーノのヴィーナスが目玉

<構成>
1 ローマ建国神話の創造
2 古代ローマ帝国の栄光
3 美術館の誕生からミケランジェロによる広場構想
4 絵画館コレクション
5 芸術の都ローマへの憧れ

<レビュー>
ワタクシ、ローマ人の物語@塩野七生を少し齧った程度のローマ好き。
*ローマ人の物語は、ローマの歴史の長さと1冊の分厚さに打ちのめされ、5代目皇帝あたりで挫折しております。

ローマには行ったことがあるのですが、カピトリーの美術館、岩倉具視といった日本使節も訪問する由緒ある美術館のようですが、美術館の存在を知りませんでした。
建国神話に由来する双子が狼から授乳する「カピトリーノの牝狼」やアウグストゥス像など、ローマの始まりを見ると「歴史」の深さに感慨深くなります。
絵画は名を知らぬ画家がほとんどでしたが、優品が多かったように思います。
教皇コレクションが核なので、キリスト絵画か多いのは当然でしょうか。
展示構成としては、ローマ建国から帝政への移行、ローマの栄光と流れが良かったものの、後半は対象が歴史なのか美術なのか曖昧で、テーマを絞りきれなかった印象になりました。
正直、地味な展覧会だったためか、参加者の方は無料で入れる「上野アーティストプロジェクト2023 いのちをうつす」のキノコの絵が良かったというお話あり

<今回の一品(お気に入り)>
カピトリーノのヴィーナス
特別展示の区画があり、東京で見るよりイタリアの美術館で周囲の環境と合わせて鑑賞すると、最も引き立つ彫刻なのだろうなと思うしだい


展覧会レビュー 棟方志功展@東京国立近代美術館

2023年10月29日

<概要>
展 示:棟方志功展鑑賞日:2023年10月29日
場 所:東京国立近代美術館
参加者:8人
<評価>
混み具合  辛い/1・2・3・4・⑤/快適
作品の数 少ない/1・2・3・④・5/多い
面 白 さ   退屈/1・2・③・4・5/面白い

「世界のムナカタ」として名を知られる棟方志功の生誕120年を記念しての展覧会

<構成>
プロローグ 出発地・青森
第一章 東京の青森人
第二章 くらし・信仰・風土 富山・福光
第三章 東京/青森の国際人
第四章 生き続けるムナカタ・イメージ 

<感想>
ワタクシ、富山出身のため棟方志功には名前や作品に触れる機会もあったのですが、令和になってどれだけの人が棟方志功を知っているのだろうか?と思っていましたが・・やはり展覧会への来館者は少ない様子

仏画の版画家というイメージありますが、今回、初期の絵から、中期の仏画、後年のビエンナーレ出展作品まで眺めてみて、抽象性は共通しつつも仕事の幅は小説の挿絵から包装紙のデザインまで、なんでもやっていた人だったんですね
仏画のイメージが強すぎて、他の仕事の存在にまで目が回らないというのが残念なところです
民藝の世界とつながる骨太なデザイン、土臭さ、令和の時代にはなかなか目にすることのなくなった線の太さ。
千葉市美術館の新版画展で見た川瀬巴水の世界とは真逆な世界です
デジタル化され土臭さが消えていく世界で、ムナカタ・デザインが見直される日が来るのだろうかと思いつつ鑑賞しました
解説にムナカタ・デザインは、地方性と相性が良いと書かれていましたが、まさに土臭さがローカライズされたパワーにつながると感じた次第。アナログではなく泥っぽさが作品としての生々しさを強く感じさせられます
でも、この土臭さは消えていってしまうのだろうなと感じ入る展覧会でした。

<今回の一品(お気に入り)>
二菩薩釈迦十大弟子
黒と白のシンプルな線の強さ、人物の骨格、表情などよく練られた構成力を感じます


展覧会レビュー デイヴィッド・ホックニー展@東京都現代美術館

2023年9月24日

現代アートの分類に入る画家ですが、 肖像画や風景など美術館賞で馴染みのあるテーマ

の作品が多く、鑑賞していて戸惑いのない展覧会でした
現代アートというと、 難解な表現物で造りも意味も理解しようのない作品? というイ
メージありますが、ホイックニーは風景画も多く、 日本人好みな作品が多かったように
思います。
肖像画では 「クラーク夫妻とパーシー」 が、 大画面で人物の表情や世界の明るさに魅力
ありました。
1F展示の終わりの方に、 「ノルマンディーの12ヶ月」 という絵巻物みたいな長大な作
品がありましたが、 iPadで描いた絵をつなげた作品のようです。
今もiPadで絵を描き続けているそうですが、 発想が柔軟でチャレンジ精神あふれている
感じがします。
色彩も豊かで自分に見えている世界を表現しようというエネルギー、ホイックニーは80
歳を超えているそうですが、 精神の瑞々しさは衰えることがないのだなと実感させてく
れました。
山下清展に続いて、今年、強く印象に残った展覧会になりました。

「クラーク夫妻とパーシー」


1月のマイイベントは、『ダンシング・ベートーヴェン』とベジャール『第九』の鑑賞

 去年からですが、1月の恒例は「ダンシング・ベートヴェン」を見てから、NHKオンデマンドで「プレミアムシアター モーリス・ベジャール振付 ベートーベン「第九交響曲」」を見ること。

新年が始まったのだなと、新鮮な気持ちを取り戻せます

バレエの振付それぞれに、第九のメッセージが込められていて活力がでてきます。
生きるエネルギー、人々が手を取り合う円環のつながり、身体の躍動感からでてくる力強さ、新年の感動を忘れないよう1年を過ごしていきたいものです

「ダンシング・ベートヴェン」
「プレミアムシアター モーリス・ベジャール振付 ベートーベン「第九交響曲」