川合玉堂「日本のふるさと、日本のこころ」展@山種美術館
混み具合 辛 い/1・2・3・4・⑤/快適
作品の数 少ない/1・2・③・4・5/多い
面 白 さ つまらない/1・2・3・④・5/面白い
簡単に、川合玉堂の年表を確認してみました。
1873年(明治6年) 愛知県葉栗郡木曽川町に誕生。
1887年(明治20年) 14歳で、京都の望月玉泉に師事。玉舟と名乗る。
1895年(明治26年) 22歳。第4回内国勧業博覧会に「鵜飼」を出展。
同博覧会でみた、橋本雅邦の「龍虎図」に感銘を受け、
翌年に橋本雅邦に師事する。
1907年(明治40年) 34歳。東京勧業博覧会の審査員となる。同博覧会に
出展した「二日月」が一等賞を受賞。
1944年(昭和19年) 71歳。東京都多摩郡三田村町御岳に疎開する。
1957年(昭和32年) 84歳。自宅で病没。
年表を見ると、明治から昭和にかけての近代の画家で、年表には書いてませんが、昭和天皇の即位にちなんだ屏風を納めたり、皇后の絵の指導をしたりと結構はなやかな経歴の持ち主です。
20代ですでに出展作が受賞を受け、早くから認められていたようで、画家としてはとても成功された人のように思います。
山種美術館での掲示です。
山種美術館の名前は、前から知ってたんですが、実際に現地に行ったのは今回が初めてです。
小さな美術館ですが、とても落ち着いた雰囲気があり、鑑賞者も少ないのでゆったりと美術鑑賞できます。
今回は恵比寿から歩いて行ったんですが、あんなに近いとは思わなかった。
徒歩、10分程度なんですね。
もっと行きにくい場所にあると思い込んでいたので、積極的に展覧会情報をチェックしてなかったので、勿体ないことしてました。
鵜飼 |
玉堂は、この作品で同博覧会での三等銅賞を受けています。
岐阜、長良川での鵜飼の様子を描いたものになります。
鵜飼をしている人たちの姿も、イキイキしてて魅力的ですが、その背景の山水の表現が素晴らしいです。
長良川での景色が描かれてることになってますが、切り立った崖の表現など中国の景色を描いた山水画に見えてしまいます。
二日月 |
霞がかった水辺の空気感が、シットリとした情緒に満ちてます。
情景としては、一日の作業を終えた農夫が二日月が輝く空の下、帰路についているところです。
そう言われると、登場人物の姿にも変わらない日々の一日だけども、現実の重みを背にしょって進む生きる力を感じてしまいます。
86×140程度のそこそこの大きさのある作品ですが、見た瞬間にとても引きつけられる魅力ある作品でした。
雨後 |
右上から左下に流れる渓流の様子といい、中央の樹木もシッカリした存在感があります。
その樹木につたう藤の木も細やかに描かれていて、自分が登山の時に目にする山の姿が目に浮かんできます。
春風春水 |
船を操る船頭の慣れた手付きや船の動きが、絵に躍動感を与えていますし、船の上で談笑する女性たちにも明るい晴れやかさがあります。
ものすごく話が盛り上がっていそうですね(笑
山肌の樹木も春らしい生命力を発していて、見ている方もとても明るい気持ちにさせてくれます。
山雨一過 |
70歳とは思えない清々しさに、満ちています。
題名から雨上がりの様子を描いているんだと思いますが、樹木の爽やかな緑が際立っています。
草の緑も風にたなびく感じがあり、とても軽やかな気持ちが伝わってきます。
早乙女 |
この頃の玉堂は、奥多摩に疎開中で戦時中に描かれたものですが、時代を確認しないと、とても戦時中に描かれたと思えない長閑さがあります。
田植え中の女性たちにも明るさがあり、いろんな会話が飛び交いながらの作業かなと想像が膨らみます。
シンプルな画面の構成に対して、描かれる女性たちには、いろんな仕草が振り分けられていて、人間の生っぽさが引き立てられ、絵の魅力を引き立たせています。
玉堂の絵は、自然を描く技術も素晴らしいですが、ポイントポイントに配置された人間がいることで、とても親密な雰囲気を表現しています。
小さくても人間が描かれることの効果って、凄いんだなと感じます。
また、そこに描かれる人間に明るさや生命力を感じさせるものであることが、とても大切ですね。
明るさのある色合いに満ちた自然と、生きた人間の調和が静かだけれども、前向きな魅力を作品に与えています。
春風春水や早乙女を見ていると、田舎暮らしの理想像って感じがしてしまいます。
他にも魅力的な絵は、たくさんありました。
小坊主は川合玉堂という人を、今回の展覧会で始めて知りました。
日本画というと、屏風や掛軸とかばかり見てきたので、現代的な雰囲気がありつつも、自然の魅力を繊細に描き出す玉堂の作品にはとても魅力がありました。