2015.8月 読書録 日本人のためのピケティ入門、ほか

8月の読書録です




 ここ数年、対策が必要だ!と言われつつ、ほとんど対策が進展しているようにみえない人口問題に関する本です。
 内容は日本の人口減少の現状と問題点について指摘しつつ、悲観的な視点とポジティブな視点の両方から話を進めています。
 少し前に~による消滅可能性ある自治体が公表され、話題になりました。
 人口減少に対する対策としては、①移民の受入れ、②死亡者の減少、③出生数の増加が言われていますが、個人的には②以外は上手く機能すると思えません。
 ①の移民の受け入れは、難しいのではないでしょうか・・・グローバル化が進んだといっても、日本の外国人の受け入れ態勢は、まったく整っていないと思います。
 自分は都内でも外国人の多いエリア(中国人やインド人ですが)に住んでいますが、自分と直接の接点のないところで生活している分には気にならないです。
 が、これが同僚や地域での同居人となってくると、関わり方が分かりません。
 それこそ、必要以上に接点を持たず互いのエリアを影響しあわないように生活していく度ことしかできないと思います。
 積極的に受け入れて、コミュニケーションしていく根性はありません。
 ②は長寿化でしょうから、平均寿命世界一らしい日本では、高齢者もずっと働いていかないといけない社会になっていくんでしょうね。
 でも、平均寿命と健康寿命は別物らしいので、健康対策も含めて方法を考えていかないといけない項目が、どんどんと増えていきそうです。
ますます、保守的な人生観になっていきそうですw
 ③の出生数はそもそもの出産適齢期の女性が減っていて、さらに晩婚化が進んでいるので解決は進まないでしょうね。
 世間では必ずしも子供の欲しいカップルばかりではないようですし、出産に対する負担を減らしたり保障を増やしたとして本当に出生数が増えるんだろうかと疑問です。
 欲しい人もいるので欲しい人がもっと出産できるような体制づくりが必要なのでしょうが、子供のいない世帯や高齢者が自分と直接に関係ないと感じやすい子育て世帯へ、援助していくような社会になるんでしょうか。
 正直、個人化が進んでいて難しそうです・・・個人化が進みすぎた欧州では反対に、家族への見直しが進んだそうですが、日本ではまだ見直しは起こらなさそうです。



 
 本当にアメリカの高校生が読んでいるのかは知らないですが、投資活動の基本が分かりやすく書かれていたので、基礎の勉強のため読んでみました。
 内容的にはこれまで、東洋経済や他の投資本で読んできた内容がほとんどで新しい追加の知識はありませんでした。
 自分がある程度、本の内容についていけるのも多少なりとも知識を仕入れてきたからで、投資に接点のない人が投資本に入っていくのは大変です。
 こちらの本では投資の一般常識に近い内容がまとめられているので、本当に教科書的な扱いで基礎の欠落を埋めていくことができます。
 投資本によっては基礎の言葉を省略していたり、著者の言いたい事へ導くために手法や方針が偏っていることがあります。
 知識なり経験がないと、相手のいうことに偏りがあるのかどうかも分からないので、基礎の段階でフラットな知識を入れておくのは大事ですね。



 小坊主は東洋経済を年間購読しているのですが、
東洋経済の掲載記事への解説勉強会の案内が届いたので参加した時に、この本をタダでもらいました。
 内容は21世紀の資本論の概要と解説をまとめたので、かなり端的に圧縮されたものです。
 ピケティというと『r>g』が有名になりましたが、データ等から『r>g』が機能していることを説明してあり、小坊主もなんとなくその通りだと感じています。
 投資による資本の増え方のキーは、複利だと思います。
 解説勉強会で話がありましたが、元本5,000万円を3%で運用し、1%を再投資に回していったとします
 元本が大きく変動しないと仮定するなら、運用益1%の50万円が毎年、元本に加算されるわけです。
 元本が増えていく以上、毎年の運用益も50万円から50.5万円と少しずつでも増えていくので、単純な計算上は資本・利益ともに増える一方です。
 これに対抗しようとすると、株や企業で一発当てるしかなくなるのではないかと思いますが、ほっておけば格差はどんどん拡大するのでしょうね。
 ただ、日本の場合、企業の役員報酬が米国のように一般社員と天地ほどかけ離れていなかったり、相続税も50%に近い高率がかけられています。
 そのため、資産の再分配は、欧米より行われているのではないでしょうか。
 それよりも、日本で多い格差は親会社・子会社間の企業間格差や正社員・非正社員間の労働上のもののようです。
 小坊主もしがないサラリーマン社会にいるので、親会社・子会社間の格差はよく分かります。
 同一労働でありながら、出身母体の違いによって賃金格差が維持され続ける形です。
 企業の多くはピラミッド型で管理する方法を取っているので、そういう形にならざるを得ないのでしょうが、同一労働・同一賃金については、派遣法改正程には話題に上がりません。
 マスコミさんも同じ親子会社間で管理しているためか、同一労働・同一賃金について突っ込みを入れてしまうと、自分の首を絞めることになるので、指摘しないんだ!という記事をどこかで読んだことがありますが、
 そんなもんなんだと思います(笑
 解説勉強会では貧困化についても、話題にあがっていました。
 一時期、世間の話題となった生活保護の不正受給はごく一部。現在、生活保護が増えている対象は、高齢者ということでした。
 高齢者の生活保護の増加は、問題だと思います。
 今後、改善することも少なく、増える一方ではないでしょうか。
 年金定期便が届くので小坊主も自分で計算してみていますが、年金収入は今のところ現役収入の50%代替をラインにしているようです。
 そのラインは減ることはあっても増えることはないでしょう・・・そう考えると、自衛する必要がありますが、そもそも自衛に回していけるだけの余力ある世帯は、結構、少なくなってきているのではないでしょうか。
 無理ゲーな気がしています(笑
 東洋経済の貧困化特集では、中流ラインが失職・病気・介護で一気に貧困ラインへ変わっていく事例が載っていました。
 小坊主も今は共働きでなんとかやっていますが、妻様がガンにかかったため、病気によるリタイアを具体的に考えたことがあります。
 そうなると、生活ラインが一気にキツくなりました・・・
 そうなったらそうなったで、何とかしていくしかないのですが、ある程度若年のうちに少しでも良いので資産運用を始め、運用益での収入増のシステムを考えていく必要があると実感しています。

 なかなかマニアックな本でした。
 数字や事例研究・演習問題が多く、正直、途中を飛ばして読んでしまいました。
 本書でのポイントは、おおざっぱにいうと下記の項目でしょうか。
①キャッシュフロー・決算書・貸借対照表の分析に力を入れるべし!
②企業の戦略、市場でのポジショニングに成長の可
能性はあるか?と分析するべし!
 コアの投資を個別株でやっている投資家には、参考になる箇所も多いともいます。
 小坊主はインデックス投資をコアとする投資なので、ここまで個別企業の分析にエネルギー掛けられない!というのが正直な感想です。
 サテライト投資で日本株の個別投資も試してみました・・・一部には数十万程度の利益を上げてくれた銘柄もあります。それ以外ではタイミングや保有期間を誤って早く売却しすぎたり、損切が重なって利益を失ったこともあります。
 少ない投資の経験しかありませんが、買って後悔、売って後悔・・・銘柄選びにもエネルギーがかかります。
 小坊主の銘柄選びやチャートを読む能力が低いためでしょうが、今の自分にはそこまでのエネルギーを掛けられる余力はないですね。
 本来はこの本に書かれているような分析を行って、自分なりの判断基準・根拠を得られる手法を確立する必要があると感じています。
 自分なりの根拠がないと、目の前の数字に振り回されて、余計なことしかしなくて損するばかりになってしまいます。
 いや~、学習と実践の同時進行・・・投資道は深く長い!と挫折しそうになります(笑

 軽くブッダの生涯に触れ、スッタニパータやダンマパダ等の仏典の言葉を引用しつつ、ブッダの思想がどのように構成されているかが書かれたモノです。
 書かれている言葉自体は平易なものなのですが、内容がやっぱり分かりにくい。
 それぞれの言葉は分かりやすいのですが、言葉がつながることで出てくる概念(『縁起』や『五蘊』や『空』とか)が分かりにくい。
 人の認識の世界は、単独で成り立っているわけではなく、感覚器官や感覚器官を通すことによる認識作用、そういった様々なモノの関わり(縁起)によって、人が成り立っている。
 そもそも、単独で存在しているモノはない・・・自分の考えていることも感情も、感覚器官等を通した世界との相互作用で機能しているモノで、自分独自の完全に固定されたモノが存在しているわけではない・・・ということを言っているのではないかと思う。
 ブッダの悟りへいたるための修行はいろいろあるのだろうけど、端的に自分に余計な反応を起こさせる社会や男女と物理的な距離をとり、無意識に脳が勝手に反応する余地を減らす。
 瞑想等認識の世界を整理していくとか、そういう方向なのではないかと思う。
そうなれば、ブッダがいうように肉親も財産も社会も捨てないと無理だべ?と小坊主は思います。
 原始仏教には、宗教で問題になりそうな『信じる』という概念もないような気がする。
 仏法という『法』(システム?、概念?)を信じるというものはありそうですが・・・
 本を読めば読むほど、日本には原始仏教は合わないな気がしてきました(笑

 以前「NEMAWASHIの技術」という本を読みまして、日本の根回しについて以下の記載があります。
・日本の組織は、論理性より情緒重視
日本人は情を論理の薄皮が覆い、欧米人は情の薄皮の中心に論理がある

 そう、日本社会は情緒の影響が大きいんじゃないか思うのです。
 そもそも、日本には大乗仏教しか入ってきていないので、原始仏教への接点が少ないというのもあると思いますが、原始仏教の理論をだされても取り込めないんじゃなかろうか。

 日本の仏教自体がインドからの流入経路で変化し、日本に到達してからも日本人に合わせて変化している。
 多くの人はその段階での仏教を仏教として認識しているけど、それぞれの仏教のタイプの違いや世界観の違いは認識していない。ついでに、神道もキリスト教も新宗教もあり、宗教の概念が曖昧な状態だと思
 反対に曖昧な状態なので、相互に余計な軋轢を生まないという利点もあるような気がしますが。
 ここ最近はイスラム教を始めとした宗教がらみの問題も、世界で起こってます。
 キリスト教のカトリックはバチカン中心のピラミッド型のようですが地方によって違ってそうだし、プロテスタントはバラバラな気がする。
 イスラム教はシーア派とスンニ派に大枠で別れて、いろいろと細分化していそう。
 そう考えると、日本に移民が入ってくるとこういったことへの理解不足で、いろいろと悶着が起こりそうで
すね。
 日本は「郷に入っては郷に従え」という意見が強いように思いますが、入ってきた移民は基本自国の文化をそのまま持ち込むでしょうから、日本の郷に合わせるわけがない。
 そんな中で郷に合わせようとしないのが悪い!という意見が多そうですが、そういう意見が多そうな時点で移民政策はほぼ無理ゲーな気がします(笑

 ついでに、日本にやってくる外国人にも日本は情緒の世界ということを理解している人は少ないのではなかろうか?
 情緒的な接点の取り方を理解できないと日本には馴染みにくい・・・でも、世界の多くは論理の世界が主流?というのであれば、それは相互に無理がでてくる気がする。
 論理でやり取りするという文化は日本では機能していないと思うし、今後も機能していくように感じません。

 ディベートの訓練などに、取り組んでいる学校や企業も多いと聞きます。
 でも、情緒の部分をクリアしないと機能しないというのであれば、ディベートの能力が向上しても上手く活用できるんでしょうか。
 なんか文化的な部分での理解を欠落させたまま、技能面の向上に取り組んでいる気がする。
 たぶん、同一民族で同じ文化が自動的に共有されるという前提にいるので、文化的な理解が必要ないように思っている人が多いんでしょうね。
 でも、技能をいきなり情緒に影響を与えられるレベルで活用できる人は少ないので、相互にズレを生じたまま組織を動かしていて、非効率化が進んでいることがありそうと余計なことを考えてしまいました(笑




0 件のコメント:

コメントを投稿