メトロポリタン美術館展@東京都美術館 レビュー

メトロポリタン美術館展@東京都美術館へ行った記録です。
混み具合   辛 い/1・2・③・4・5/快適
作品の数   少ない/1・2・3・4・⑤/多い
面 白 さ つまらない/1・2・3・④・5/面白い

ゴッホの「糸杉」が初公開されるということで、楽しみにしつつ行ってきました。
また、メトロポリタン美術館にもいつか行ってみたいと思っていたので、今回はその予習と思って、期待に胸をふくらませながら鑑賞しました。

今回の印象深かった作品です。
東京都美術館
メダブスとカミラを描いた皿

「メダブスとカミラ」って、詳しい出所は分からないのですが、この色使いが鮮烈でとても印象に残っています。
陶芸で絵付けをしていると、こういう絵が描けるようになれればなぁというのと、この筆使いの緻密さに感動します。
陶芸だと、土が軟らかいので平面に土を延ばすのが難しいんですね。
ただ平たくしただけだと、単なるプレートになってしまうし・・・
でも、いずれは磁器にもチャレンジしてみたい。
ハイビスカスとオウムの窓
冬の寓意

「ハイビスカスとオウムの窓」は、ルイス・コンフォート・ティファニー(チャールズ・ルイス・ティファニーの息子)によるデザインです。
これもオウムの羽の表現が素晴らしい。
ガラス製なので、裏面から光でも当てればより色鮮やかに見えると思います。
これを部屋の装飾として、使える家は限られるでしょうが、絵画のように壁にかけてリビングにでも展示したい。
「冬の寓意」(ジャック・ド・ラ・ジュー)は、画像が小さいので分かりにくいと思いますが、実物は冬の冷気を感じられるくらい、題名どおりの季節感を表現した絵でした。
くすんだ太陽といい、中央の女性像の質感の冷たさといい、引き締まった雰囲気が見事です。
糸杉
音楽を奏でる男女の羊飼い

さて、今回のメインであるゴッホの「糸杉」です。
自分が見に行ったときは、何故かこの絵の前にほとんど人がいなかったので、じっくり見ることが出来てラッキーでした。
病気療養中に描いた7作あるシリーズの1つらしいです。
いつもの盛るかのような厚塗りの筆使い。
これが、樹木の上へ燃え立つかのような存在感と勢いを感じさせます。
糸杉の緑に対して、空の青さが対比色になってお互いを引き立てているように思います。
油絵ってこう塗り重ねることで、多層的な表現が出来るところが羨ましいし、魅力ですね。
「音楽を奏でる男女の羊飼い」は、羊毛と絹で織られた239×292cmもある大きなタペストリです。
今回の展覧会は、絵画以外にもタペストリや写真なども多くメトロポリタン美術館の多様な展示の一端を垣間見ることが出来ました。
南ネーデルラントは、今のベルギーに当たるらしいですが、この緻密なデザイン!!
完成度の高さが、ある種の品格を感じさせるほどです。
これだけ草花が描かれているのに、それぞれに存在感がありながら全体のバランスが壊れていないところに技術の高さを感じます。
また、タペストリということで、織られた糸が絵画とは違う立体感と色合いを表現しています。
ヴェネツィア・サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂
草取りをする人々

カナレットの「ヴェネツィア・サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂」とジェール・ブルトンの「草取りをする人々」です。
カナレットはカメラ・オブスキュラという初期のカメラを使用して、下書きを描いていたそうですが、このカチッ!とした遠近感に、写実性はカメラ・オブスキュラという「技術」による効果を想像するに十分です。
美術館へ行き始めた頃は写実的な絵画が好きで、現実を如何に写しとるかという絵の技術に感動していました。
正直、カメラのない時代に目に映る姿を形にする方法は、絵画が主なものだったことを考えると、カメラ・オブスキュラから始まるカメラの与えた影響は、とても大きかったはずです。
絵画の技術がどれだけ巧みでも、目に映る形を写し出す機能はカメラの方が優れているし、この段階から絵画に独自の表現を与えていくかという試行錯誤が必要になってきたのだと思います。
ジュール・ブルトンってよく知らないんですが、こういう田舎絵は田舎者の心にグッ!ときます(笑
特にこの夕焼けのあかりが、1日の終わりと働く姿の美しさを際立てます。
どうでもいいことですが、自分は朝焼けより、夕焼けが好きです。
マーセド川、ヨセミテ渓谷
日の出

最後はアルバート・アミスタットの「マーセド川、ヨセミテ渓谷」とクロード・ロランの「日の出」です。
アミスタットはアメリカの作家の作家で、1800年代のものになります。
この切り立った岩の感じに、しばし目を奪われました。
クロード・ロランの「日の出」と比べると、この絵の中の空気の違いが面白いですね。
「ヨセミテ渓谷」の澄んだ空気に対して、「日の出」の濃密さ
題材が違うし地域も違うので当たり前なんですが、絵画はどれだけ見ても奥が深くて、常にいろんな発見や感動するポイントがあって、美術鑑賞は止められないですね(笑。