ラベル Art・展覧会レビュー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Art・展覧会レビュー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

展覧会レビュー、北斎のデザイン力を再発見!北斎のウォーターワールド展@すみだ北斎美術館

展覧会:北斎のウォーターワールド展 
鑑賞日:2018年4月 
美術館:すみだ北斎美術館

・北斎の描く「海」・「滝」の表現をたどる展覧会・北斎の弟子の作品もいくつかあり、北斎の作品と比較すると、明らかに北斎の作品の方が、デザインや色合いといいモダンで古臭さがない。
 対して弟子の作品は固いというか、表現に洗練されたデザイン性が感じられない。
 感性という点で、モダンなデザイン性の高さは北斎の魅力と再確認
 遠近感のある作品もあり、立体さを感じられるのは北斎のスゴさ 画家の技術として、北斎が頭一つ抜きんでていることがよく分かった
・諸国瀧廻りでは、北斎の描いた絵と実物の写真をならべて比較できる展示もあり、江戸時代から時間が経過して瀧の規模が小さくなったのか、北斎がかなりディフォルメして描いたのか?、悩むのも楽しい。

〇今回の一品(お気に入り)『諸国瀧廻り 木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧』瀧の流れ落ちる水の円形の独特さ、画中に人物が描かれることで作品に生気が宿っているように感じられる

〇展覧会チラシ

展覧会レビュー、40mもある『生生流転生』をフルで鑑賞!生誕150年 横山大観展@東京国立近代美術館

展覧会:生誕150年 横山大観展
鑑賞日:2018年4月 
美術館:東京国立近代美術館

・明治~大正~昭和の画家だからか、日本画でも絵の質感が新しい。画材が近代化していて、発色などが良くなっている。
 線が細やかで、色合いがクリア
・多彩な画風をこなしているが、古典的な題材をテーマにした作品にはスキがなく、技術的な裏打ちがシッカリしている。
 伊勢物語を題材にした「井筒」などに、そう感じた
・目玉の一つである「生々流転」は、40mもある画巻。初めて実物を天から落ちる雫から、最後の龍の飛翔まで見ることができた。
 とりあえず・・長い!、技法やテーマについて、いろいろと見どころある作品だと思うが、せっかちな小坊主には長すぎて途中でシンドクなってきた。
 朦朧体が好き!という方には、作品世界に浸りきれる滅多にない機会
・皇室との関係が深く、作品を献上していることなど自分の知識不足を再確認。戦時中の報国の思想など横山大観に対する、新しい視点が得られたと思う。
・展示期間が、4/17~5/27と1ヶ月程度の間に結構な数の展示替えがあるため、見たい作品がある場合、事前に美術館サイトの出展目録から展示時期の確認が必要。
 小坊主も「野の花」や「紅葉」という作品を見たかったが、展示期間が合わず見られなかった。

〇今回の一品(お気に入り)『迷児』(まよいご)
 日本画でキリストや仏陀・孔子等を描き、混沌としていた思想界の世相を描いたもの。
 一瞬、何を描いているのか?と何度か見直すほど、インパクトを感じた。
 炭絵ということで、燃やして炭にした檜だけで描いていることにも驚き。
 一つの画材だけで、描き分ける大観の技術の高さと、題材に挑戦するチャレンジャー精神を感じた。


〇展覧会チラシ





展覧会レビュー、桜さくらSAKURA2018展@山種美術館

展覧会:桜さくらSAKURA2018展
鑑賞日:2018年3月 
美術館:山種美術館

・川合玉堂など、何度か目にしたことのある作品もある。収蔵品展のような形?
・明治~平成まで、年代の新しい作品も多い印象

〇今回の一品(お気に入り)
石田武『吉野』
奥村土牛『吉野』

・桜で有名な奈良の『吉野山』を描いた作品、同じ吉野山でも表現がずいぶんと違う
・奥村土牛は、ピンクのモヤで桜を表現
 石田武は、写実性が高く1本1本と木々の違い、個性を取り込もうとする姿勢を感じる。中央に大きく杉をおいて、構図でも見せ方を意識している
・技術的な細やかさと見せ方で目を引くのは、石田武の『吉野』
 ピンクのモヤだけで桜を表現する奥村土牛も、芸術的?と言えるのかもしれない

・「芸術的な表現」という言葉に対して、自分の中での定義が曖昧なことに気づいた。
 奥村土牛は解説によると『吉野』を描くにあたり、山の厳しさ・寂しさを感じ、歴史画のようなイメージで描いたとある。
 吉野山に寂しさを感じる感性・・無常な寂しさでも感じたのだろうか?と想像してみる
・石田武には、木々の濃密さ、山の存在感を感じる
 自分の中にある緑がずっと続く、「山」というモノに近い雰囲気を感じた。自分の中の山に、ピンクさ(桜)はないけれど。
 「描く=写実的」という思い込みが、自分の中にあるのかもしれない・・あえて表現を省略する意味を考えてみたい

〇石田武『吉野』


〇奥村土牛『吉野』

〇展覧会チラシ

展覧会レビュー、SF・怪獣映画の世界展@東京国立近代美術館フィルムセンター

展覧会:SF・怪獣映画の世界展
鑑賞日:2018年3月 
美術館:東京国立近代美術館フィルムセンター

・常設展も同時に見られる、企画展の展示場所が常設展からの出口付近
・常設展は、日本での映像記録の本当に初期(江戸時代末期~明治初期)からのモノもあり、画像はザラついていてもそこそこ動くことに驚く
・明治、大正頃の映画ポスターが絵画的で魅力ある。写真とはまた違った表現力を感じる
・女優がブロマイドでも、顔を真っ白に白粉を塗っているところに時代を感じる
・歴代ゴジラのポスター、ゴジラの形がどんどん変わっていく。ズンドウで細身でもあったゴジラが、後期になるとムキムキ?に変わっていく。
 性格も、理由もなく暴れまわるモノから、怪獣同士の闘いになり、人間の味方的な立ち位置にも変わっていく。
 恐怖の対象から平和な大衆時代に合わせて、性格も変わっていったことが分かる。震災を経て『シン・ゴジラ』(ポスター展示はなし)で原点回帰とも言える

〇今回の一品(お気に入り)
『2001年 宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック、1968年)
・約50年も前の作品だが、宇宙船・宇宙ステーションのデザインが秀逸、雰囲気に古臭さを感じない。
 キューブリックは、登場する時代を飛び越しすぎていたのか?とも思う

〇展覧会チラシ



展覧会レビュー、プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光

展覧会:プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光
鑑賞日:2018年2月
美術館:国立西洋美術館

・混雑もなく、鑑賞スペースには余裕があった
・70点と展示数は多く、宗教画・肖像画・風景画・静物画と種類も多様
・宮廷(Ⅳ)~風景(Ⅴ)のゾーンは、大型の作品エリアで見ごたえがあった

〇今回の一品(お気に入り)
『聖ベルナドゥスと聖母』(アロンソ・カーノ、1660年)

・彫刻のように高所に置かれた聖母の乳房から、白い線が僧侶の口へ入っていく・・初めて目にするパターンで、インパクト大!
・はじめ手から光線がでているのか?と思ったが何か違う・・乳房からビームがでている!
 『聖母』の奇跡なのだろうが、母乳がビームのように飛ぶ姿は・・②度見するくらいビックリ
 『聖母』の片乳というのも・・神聖さの表現なのだろうけど、エロス?な気がしなくもない
・解説によると、スペインでは有名?なのかよく好まれた逸話らしい。
 好まれた理由はよく分からない・・マリア信仰なのだろうが、マリア信仰が分かっていないので、表現する意図も分からない
 他にも同じ題材の絵があるのか、気になる


〇展覧会チラシ





展覧会レビュー、北斎とジャポニスム@国立西洋美術館

展覧会:北斎とジャポニスム
鑑賞日:2017年12月
美術館:国立西洋美術館

・北斎漫画の1コマが日本を紹介する本の挿絵として利用されていたことが、個人的に新しい発見
・北斎の作品は、多くが浮世絵や冊子といった印刷物。外国人にとっても入手しやすかったのかもしれない
・北斎の作風が、ゴッホやドガに影響を与えたとよく解説に書かれているが、どう影響を与えたのか?・・よく分かっていなかった。
 本展覧会では北斎の図案(デザインや構図)が、磁器やガラス工芸、絵画に模写されるかのように描かれている実物を見ることで、分かりやすい展示になっている。
 中には、北斎の描いた図案をそのまま写している作品もあり、北斎の図案を比較できるため、とても面白い展示方法
・小坊主も陶芸のデザインにいろいろな図案をパクっているが、やっていることは昔の人も同じで安心した(笑)
・画家の作品を時系列に並べ、北斎に接した時期に作風がどう変化するか?をチェックすることが大事、ポイントを取り出すのではなく全体の流れを把握することが大事ということを再認識した
・展示数の多い展覧会だが、北斎の作品と他の作品(西洋画など)を比較できるよう構成されているため、絵としての鑑賞には力が入らず「これは!」と印象に残る作品は、見出しにくい

〇今回の一品(お気に入り)
サンティアゴ・ルシニョール『黄昏』
北斎『山辺の赤人』
北斎の構図がそのまま西洋画に入れ替えられたようで、並べて鑑賞すると類似性が高く何度も見比べてしまう


〇展覧会チラシ






展覧会レビュー、怖い絵展@上野の森美術館

展覧会:怖い絵展
鑑賞日:2017年11月
美術館:上野の森美術館

・企画の勝利!、話題性十分で大人気・・入館まで140分
・普段、目にする機会の少ない画家の絵も多く、企画から選別された絵はいろいろ解釈できて楽しめた
・神話~怪物~現実~歴史とテーマに沿って絵が展示されていて、少しこじつけな所も感じつつ、解釈によって絵の見え方も変わるため、解説の力は大きい
・セザンヌの「殺人」という「死」をテーマとした絵があり、とても意外な絵を描いていることに驚いた
・目玉である「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は予想より大きな絵で、緻密な描写もあいまって迫力ある絵画
・死や恐怖の表現には、死の場面を描くものから怪物をそのまま描くもの、暗示によって表現するものまで様々。どんな表現に死や恐怖のイメージを抱くかは、受け手のチャンネルにも多様性があり、自分との対話にもなる

〇今回の一品(お気に入り)
ギュスターブ=アドルフ・モッサ『彼女』
男を食う女・・マンイーターを表現したモノ
裸身に描かれる強いエロスと、死体の山・・エロスと対照的な冷たい眼差し。インパクトある

〇展覧会チラシ





展覧会レビュー、デンマーク・デザイン展@損保ジャパン日本興亜美術館

展覧会:デンマーク・デザイン展
鑑賞日:2017年11月
美術館:損保ジャパン日本興亜美術館


・ブロガー内覧会にて、鑑賞
・デンマークというと、北欧デザイン・・いわゆるシャレオツなインテリア、食器などの展示
・どこかで見たことのある素材感、工業製品でありながら柔らかみのあるデザイン、シンプルだけど品のある簡素さ
・工業性(モダンさ)と木材を活かした素材感のあるバランスに、独自の世界観を感じられる
・デザイナーは何人も出ている中で、北欧デザインのアイデンティティともいえる共通の様式美、共通点を感じることができる
・シャレオツな家具はこう使えば良いのだ!と、デザイナーが自宅で使っている写真が展示されているが、家の広さや構造が日本とそもそも違うので、やはり写真の中での別世界に見えてしまった
・ハンス・ウェグナーの椅子に、実際に座ることのできるエリアがあり、ちょっと憧れていた椅子の座り心地を確かめられるだけで、行く価値はある

〇ブロガー内覧会の様子
*下記の写真は、ブロガー内覧会用に特別に許可を得て撮影したものになります。




〇今回の一品(お気に入り)『サークルチェア』ハンス・ウェグナー
デザイン雑誌等で一度は見たことのある椅子・・本展覧会では実際に座ることができます。
長時間、座り続けるのは難しいバランスだけど、デザインは秀逸

〇展覧会チラシ






展覧会レビュー、興福寺中金堂再建記念特別展 「運慶」展@東京東京国立博物館

展覧会:興福寺中金堂再建記念特別展 「運慶」展
鑑賞日:2017年10月
美術館:東京東京国立博物館


・玉眼の構造的な説明があり、仏像を見ていく参考になった
・菩薩像の腰にヒネリがはいっていて、慶派の特徴らしい。菩薩像は垂直に立っている印象があるので、珍しく感じた
・運慶、仏像は肉感的と言われるが、下腹がしっかり出ているのが共通していて面白い
・大きな仏像が多く、仏像の周りを周回できるようにしていたり、CT画像での仏像内部の説明などがあり、いろいろ工夫されていることが分かる
・玉眼の効果か、仏像の表情に変化があり、個性が感じられるモノが多かった。やはり目線が分かると、表情として伝わるのだろう
・四天王立像(興福寺)の多聞天像、見下ろす構造の仏像が多い中、見上げる構造の姿で、印象に残る
・鹿や犬の木造があり、とても珍しい。犬の木造は、シンプルながら純朴さの伝わる姿で、可愛らしい

〇今回の一品(お気に入り) 毘沙門天立像(国宝)願成就院
立ち姿に品があり、装飾もシンプルで力強さがあった

四天王立像(興福寺) 多聞天像
見上げる構造の姿が珍しく、もう一つのお気に入り

〇展覧会チラシ





展覧会レビュー、天下を治めた絵師 狩野元信展@サントリー美術館

展覧会:天下を治めた絵師 狩野元信展
鑑賞日:2017年9月
美術館:サントリー美術館

・狩野派二代目、画体(真・行・草)を確立。狩野派の『型』を作り上げることで、工房として流派の運営を可能とし、画業集団を作り上げていった。
・行・草」のマークがあり、画体の違いを較べやすいよう工夫されていた
・真体、中国絵画のセオリーにならった明確な構図、格式高い表現
・行体、構図・線にゆるやかさがあり、日常的な接しやすさがある
・草体、ラフ画のような単純な線で、深みはないといえる。接しやすさはあるが、印象にも残りにくい
・絵巻、色彩も鮮やかに配色にもバランスを考えている様子がうかがえる。オレンジの色使いに目を惹かれるモノがあった

〇今回の一品(お気に入り) 真山水図
父「正信」の山水図を基としながら、構図や世界観に広がりが与えられ、枠が大きくなった印象がある

〇展覧会チラシ